精神科の入院形態 (「仙台経済界」2000年 7-8月号掲載)
- 斎藤 徹
- 2020年8月15日
- 読了時間: 2分
少年による凶悪犯罪が相次いでます。5月1日に名古屋で主婦殺人事件、その2日後には佐賀でバスの乗っ取り事件がありました。佐賀の事件は、問題の少年が精神病院に入院中であっただけに、精神科医療にあらためて注意が向けられそうです。 この事件は当初、同級生からの嫌がらせによる孤立感や反発心が動機と考えられていました。ところがその後の新聞報道によれば、両親から精神病院に入院させられた不満も絡んでいたようです。そこで今回は、精神科における入院について簡単に説明したいと思います。 精神科の入院は次の3つの形態に大きく分けられます。「任意」、「医療保護」、「措置」という形態です。まず「任意入院」。これは患者さん自身の意思による入院で、入退院はもちろん、入院中の面会や通信なども制限されません。治療環境も特別な例外を除いて、原則的に鍵のない出入り自由な開放病棟とされています。 これに対して、本人の意思にかかわらない入院が2種類あります。「医療保護入院」がそのひとつで、厚生省で定められた資格を持つ精神保健指定医が診察の結果、集中的な治療を要とすると認めれば、本人の拒否があっても保護者の同意で入院させることができる形態です。例えば、幻覚や妄想といった病的体験に支配され通常の生活に支障をきたしたり、気分の落ち込みがひどく自殺の危険がある時などには、文字通り本人を医療的に保護しなければなりません。ただこのような場合、自分の病的状態に対する自覚を失うか、自覚できても何らかの個人的な理由で入院を拒否することがあります。こうした状況で適応されるのが「医療保護入院」です。 さらにことが深刻で、警察力が介入する程になると「措置入院」の対象です。麻薬やアルコールのために暴力をふるって周囲に迷惑をかけたり、自らもけがをするなど、明らかな危険を伴った状態では、精神保健指定医2人が診察します。そしてその結果が一致してはじめてこの入院形態がとられることになります。 厚生省の精神保健福祉科調べでは、平成9年6月の時点で、全国の入院患者数は約33万6000人であり、「任意入院」はその7割、残り3割のほとんどが「医療保護入院」でした。これは過去5年間にわたってほとんど見られる傾向です。 このように精神科では、状態によって本人の意思に沿わない入院が必要なこともあります。しかしいずれにしても、適切な医学的治療を目的としていることに変わりありません。
「仙台経済界」2000年 7-8月号掲載
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