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怜玢
  • 執筆者の写真斎藀 培

リリヌ仙台垂医垫䌚報 2020幎3月号 o.667 掲茉

  私はリリヌの頭郚を䞡手で包み、ひたすら頬ずりしおいた。錻筋から埌頭郚ぞ、耳から口元ぞず、少しでも䞍安を取り陀いおやりたい䞀心で。向かい合っおリリヌを支えおいる看護婊さんも、暪で泚射をしおいる獣医さんの存圚も気にならない。胞の芯からこみ䞊げおくるおえ぀を抑えるので粟䞀杯だ。

 突然、蚺察台の䞊に立っおいたリリヌの腰が厩れ萜ち、背䞭、䞊䜓も続いた。看護婊さんはリリヌをそっず暪にさせた。

 獣医さんは、リリヌの前肢の血管に぀ながったカテヌテルから麻酔薬を泚入し終え、シリンゞをはずそうずしおいる。

 「今眠っおいる状態です。次に心臓を止める薬になりたす。よろしいですか」

 䞀瞬頭の䞭が真っ癜になった。そしお静かに寝おいるリリヌの姿が目に映っおようやく蚀葉が出た。

 「もう痛みは感じおないのですね」

 「そうです。楜になったでしょう」

 これでいいのだず思った。

 「よろしくお願いしたす」

 昚幎月日、晎れた日曜日の昌過ぎ、ただ暖かさだけが残っおいるリリヌを抱えお動物病院を出た。車に乗せるたでの間、腕の䞭のぐったりずなった䜓は異様に重く感じた。

 その日の前倜、犬たちを車で河原ぞ連れお行き、散歩を終えお垰ったのは時をたわっおいた。正月も近いし準備䞇端敎えようず、぀いでにトむレシヌツを買い、絊油、掗車をしお、い぀もより遅くなっおしたった。

 フヌドを食べさせお䞀息入れようず思ったが、リリヌが萜ち着かない。ハりスに出たり入ったりする。寒いのかず思っお敷物を厚くしおも䞀向に倉わらない。そのうちクヌクヌ錻を鳎らし、ハアハアし出す。

 よく芋るず巊埌肢を床に぀けおいない。膝関節䞊郚の腫瘍がパンパンに硬くなり、硬匏テニスボヌルが半分埋たった状態だ。朝の散歩の埌にはタオルで拭いおやりながら党身を芋おおり、今朝はこれほど倧きな腫れはなかった。

 すぐに倜間動物救急病院に連絡を取り、車で向かった。蚺察しおくれたのは若い獣医さんで、よく話を聞いおくれるがもどかしい。

 腫瘍が芋぀かり経過芳察䞭に急倉した旚を䌝え、どうにか痛みを和らげおやりたいず蚎えた。

 今できるこずは、鎮痛剀ずステロむド剀の皮䞋泚射で様子を芋るこずずいう。

 その埌垰宅しおからも泚射の効果は芋られず、リリヌは錻声を鳎らしながら私の埌を぀いおくる。ハりスに入れお頭をなでおやるず次第にりトりトするが、䞍意にハッずしたかのように起き䞊がっおは出ようずする。その繰り返しが䞀晩続いた。

 振り返るず、巊埌肢の異垞に気が぀いたのは10月の末。他にもいく぀かある脂肪腫ず同じものかず思っおいたが、それが日増しに倧きくなり、螵郚の浮腫を来たしお11月3日、かかり぀けの獣医さんを受蚺した。  怜査の結果「肥満现胞腫」ず刀明し、根本治療ずしおは広範切陀だず説明を受けた。぀たり巊埌肢の切断ずいうこずになる。私ずしおはリリヌの幎霢を考え、できるだけ䞍安や恐怖を䞎えずそばで芋守りたい。そこで察症療法ずしお抗菌剀ず消炎鎮痛剀で様子を芋るこずにした。  薬剀の効果は驚くほどで、翌日には腫れはすっかり匕いた。ずころがほっずしたのも぀かの間、月日頃からたた少しず぀膚らみが目立っおくる。再床同じ凊方を週間出しおもらったが、今回は䞀向に腫れが小さくならなかった。  同じ幎の月、歳になるアフガンハりンドが苊しみの䞭で息を匕き取った。その苊い経隓が私には鮮明に残っおいる。レントゲンで手拳倧の内臓腫瘍が発芋された時はすでに手の斜しようがなかった。二床ず同じ繰り返しはしたくはない。

 結局私はリリヌに安楜死の遞択をした。

 才ケ月。

 病気知らずの気䞈で利発なサルヌキだった。

 幎が明けお立春が過ぎた頃、ようやく悲しみが癒え、日垞が戻っおきたような気がする。それでも今なお、犬たちぞの埌悔が絶えない。圌らが苊痛にある姿を芋おいるのも忍び難いが、安らかにず願っお決めた遞択も、思っおいたほど容易に受け入れられるものではなかった。


仙台垂医垫䌚報 2020幎3月号 o.667 掲茉


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