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更年期障害 (「仙台経済界」2001年 11-12月号掲載)

  • 執筆者の写真: 斎藤 徹
    斎藤 徹
  • 2020年8月15日
  • 読了時間: 2分

 更年期障害とは本来、閉経前後に生じるさまざまな心身の不調をいいます。日本人女性の場合、平均的な閉経年齢は50歳頃で、その前後約10年間のいわゆる更年期がそのリスクの高い時期です。  症状は、ほてり、冷え、めまい、頭痛などの自律神経失調状態から、情緒不安や無気力といった精神面の不調まで多岐にわたり、原因は卵巣の老化にあります。  卵巣は、脳内の視床下部や下垂体という部分と互いに作用しあって女性ホルモンを分泌するところです。女性ホルモンの分泌が低下すると、下垂体が大量にホルモンを分泌して卵巣を刺激します。下垂体を働かせるためには視床下部もホルモン分泌をフル回転させなければなりません。この悪循環が続き、やがて全体のバランスが崩れ、ホルモンコントロールを司る自律神経系や、これと密接に繋がりのある精神面に不調が生じるのです。つまり更年期障害は、卵巣機能の低下に対する一連の心身反応ともいえ、これまで女性に特有とされてきました。  ところが最近、男性にも似た状態があることが話題になっています。患者さんの中には自らそうではないかと心配する人もいました。  実際には男性の更年期障害は、医学的にまだ確立されたものでなく、研究段階にあります。そうした研究によれば、男性も中高年期に自律神経失調状態や精神面での不調が多いとされ、ただ、性ホルモンの急激な低下が著しくないため、焦燥感や意欲低下といった精神不調の方が目立つとのことです。体内環境の加齢変化に仕事や家庭問題などの外部要因が重なって生じるといいます。  いずれにしろ更年期障害は、症状の種類や程度に個人差があり、なかにはほとんど何もないままこの時期を過ぎる人もいるようです。  しかし、気になる状態が長引いたり生活に支障が出るような場合には医学的な治療が欠かせません。代表的な治療としては、ホルモン療法および、漢方薬や精神安定剤での薬物療法があります。前者は不足した女性ホルモンを補う、いわば原因療法で、一般に婦人科で行われます。後者は自律神経系を整えたり不安や緊張を和らげる薬によって心身を回復させるもので、診療内科や精神科が専門ですが、心理的ストレスの比重が大きい場合は精神科のカウンセリングも必要でしょう。  今や失業率は5パーセントに達し、特に中高年サラリーマンの再就職は厳しい状況にあります。更年期障害が男性にも浮上してきたのはこの世相の反映かもしれません。


「仙台経済界」2001年 11-12月号掲載

 
 
 

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