心的外傷後ストレス障害 (「仙台経済界」2000年 3-4月号掲載)
- 斎藤 徹
- 2020年8月15日
- 読了時間: 2分
心的外傷後ストレス傷害とはその名のとおり、心に傷を残す強烈なストレス体験から発症する精神障害です。1980年、米国精神医学会が提唱したもので、本来の英語名 Post-Traumatic Stress Disorder から頭文字をとって一般にはPTSDと呼ばれています。日本では、1995年の地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災の被害者を通して、大きな注目を集めました。 原因としては今述べたような犯罪や自然災害の他、交通事故、子どもでは親の離婚などがあげられます。人によって異なり、それぞれの人生経験や性格傾向が影響し、ある人には過酷な体験が、誰の心にでも傷を残すものとは限りません。原因となる体験だけでなく、その人固有の傷つきやすさも関わり、双方の作用が重なって発症するそうです。 実際こうした条件が重なると、たいていは1カ月以上経ってから、次のような症状が現れます。恐怖の思い出が夢として繰り返されたり、目覚めている時でも突然よみがえってくる白日夢のような再体験。些細な刺激に対して過度に驚いたり興奮したりする過敏反応。日常の活動に対して関心が薄れる感情の麻痺化や自分の殻に閉じこもってしまう自閉。これらの症状は、アメリカの調査によると、約半分は3カ月以内に回復し、約1割がそれ以上の期間に及ぶとのことです。 治療には、不安や恐怖を取り除く薬物による方法や、傷ついた心がショックを乗り越えられるように支えていく精神療法が主体となりますが、もちろん親や家族の暖かな対応も必要なことはいうまでもありません。PTSDの原因で最も多いのは交通事故と性犯罪といわれています。いずれの場合も家族の役割は重要であり、特に性犯罪を受けた女性では簡単に話せる相手もない場合が多く、それだけに周囲の慎重な対応が望まれるところです。 仙台市でもこの4月から、こうしたPTSDに悩む人達への支援施設が開設されることになりました。「宮城県犯罪被害者支援センター(仮称)」がそれで、全国では13番目、東北では初めての組織になります。準備期間中は宮城県警の犯罪被害者対策室に事務局を置き、精神科医、臨床心理士、ボランティア関係団体などが中心となって、心のケアから法律相談までの幅広い活動を計画中です。 人権の名のもとで罪に問われない加害者がいる一方、陰で行き場を失い途方に暮れる被害者の数は計り知れません。そのような被害者達の救済に、この支援組織が大きな力となることを期待します。
「仙台経済界」2000年 3-4月号掲載
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