不眠症 (「仙台経済界」2001年 7-8月号掲載)
- 斎藤 徹
- 2020年8月15日
- 読了時間: 2分
人間の1日の睡眠は7、8時間が平均だそうです。睡眠時間が足りないと「不眠」であり、注意や集中力の低下、全身倦怠感、食欲不振、さまざまな心身の不調が生じます。 原因は環境から心身の状態まで多岐にわたります。騒音、照明、温度や湿度に代表される睡眠環境、ストレスやうつ病といった精神的なトラブル、アレルギーや胃潰瘍など身体の異常も不眠をきたすことが少なくありません。 不眠の現われ方も一様でなく、いくつかのパターンがあります。寝つけない訴えが最も多く、正確には日頃より30分以上かかるかどうかが境目になるでしょう。反対に寝つきがよくても早く目覚めてしまうことがあります。普段より2時間以上早い日が続けば要注意です。また、一晩のうちに何度も睡眠が中断されることもあり、この場合は時間をかけても浅眠感しか残りません。これらのパターンは単独で現われたり、複数同時に重なることがあります。不眠は通常でも経験されますが、週に3日以上、少なくとも1ヶ月続くと本格的な「不眠症」です。 不眠症の治療は、原因の除去と同時に睡眠薬が使われることがあります。 睡眠薬には現在、作用が数時間から数10時間におよぶものまで多数あり、それぞれの不眠パターンに見合った薬剤がきめこまかく選ばれるようになりました。寝つきの良くない例には短時間作用型が、朝までの熟睡が目的の場合にはある程度の長さのものが処方されます。 服用にあたっては十分な睡眠時間を設定しなければなりません。長時間作用型になればそれだけ時間を要し、遅くずれ込むと翌朝不都合が生じます。服用してからは静かに寝るだけにすることも大切です。脳に効果が作用している間の活動は記憶に残らないことがあるからです。ただこれはいつまでも尾を引くことのない一時的な現象にすぎません。 原因の解決とともに毎日の睡眠が安定したら、個々に応じた観察期間の後、睡眠薬を減らす段階になるでしょう。一気に止めると不眠の跳ね返りを被ることがあるので、徐々に行うことが要点です。こうすることによってスムーズに離薬することができます。 睡眠薬というと副作用や依存性が目立ち、恐い薬というイメージが強いようです。しかし、専門医と相談しながら、必要な時に適切に用いれば心配はいりません。むしろ薬を恐れて不眠症を助長させるほうが危険です。
「仙台経済界」2001年 7-8月号掲載
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