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パニック障害 (「仙台経済界」2001年 5-6月号掲載)

  • 執筆者の写真: 斎藤 徹
    斎藤 徹
  • 2020年8月15日
  • 読了時間: 2分

 突然の動悸と息苦しさ。死の恐怖にかられ救急車で病院に駆けつけても心臓に異常なし。発作的なめまいとふらつき。どうしようもなく不快な感じに耐えられずさまざまな検査を受けても原因不明。結局は気のせいと説明され、そのまま不安を抱えて過ごしている人が少なくありません。  こうした人達は以前、「心臓神経症」か「不安神経症」、または「自律神経失調症」などとされてきました。ところが最近では、心臓やめまいの発作には強い不安、いわゆる「パニック」といわれる状態を伴なうことから、パニック発作と呼び、この発作を中心とする一群をパニック障害と診断することになっています。  発作は先に述べた例のように、動悸、息苦しさ、めまい、発汗、胸痛などさまざまな身体症状が予期せず襲い、死んでしまうのではないかと思われるほど激しい動揺を引き起こすのが特徴です。突然始まり急速にピークに達するため、まさに「破滅」が目前に迫ってくる感じでその場から逃げ出したくなりますが、ほとんどは10分以内でおさまり、長くても1時間を超えることはありません。  パニック障害はあらゆる年齢層にみられ、とりわけ20代から30代半ばに発症することが多いようです。何らかのストレスが引き金となって生じた自律神経系のアンバランスと考えられており、心と身体の過剰な相互反応ともいえます。発作を繰り返していくうちにまた起こるのではないかという予期不安が強まり、一層症状がひどくなるわけです。  発作が起きた時にはとにかく静かに休み、深呼吸をして気持ちを落ち着かせなければなりません。周囲の人達も大騒ぎせず、安心させる言葉をかける必要があります。身体のどこかが壊れているわけではなく、もちろん死に至ることもないので、ことさら発作をこわがらないように心がけることが大切です。  治療としては抗不安薬や抗うつ剤による薬物療法が一般的であり、最近ではSSRIという新しいタイプの抗うつ剤がよく使われるようになりました。同時に、発作に対する理解を深め、過剰な構えや誤った思い込みを修正する心理療法、心身をリラックスさせる自律訓練法などを行うと効果的です。  これまで不安は気の持ちようで克服できる、克服しなければならないといわれてきました。しかし、心身両面からの解明により、病的な不安は医療の対象となることが明らかにされています。適切な治療により余計な不安を取り除き、生活の質を高めることが可能となっているのです。


「仙台経済界」2001年 5-6月号掲載

 
 
 

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