斎藤 徹
Frame of mind 2 体内時計(シリウス・一番町[シリウスプレス]5th Anniversary 掲載)
私たちは日中の活動と夜の睡眠を繰り返しながら毎日を送っています。この活動と睡眠のリズムは両目の奥に位置する視交叉上核(しこうさじょうかく)という神経細胞群で作られます。この細胞群がいわゆる体内時計です。
体内時計は光の受容器である目とつながっており、太陽光を浴びた時刻に応じて変化します。早朝に朝日を浴びると夜に眠くなる時間が早くなり、夜に強い光を浴びるとまだ昼が続いていると勘違いして遅くまで眠れなくなります。
光は、プリズムで虹色に分解されるように、赤外線から紫外線までの集まりであり、体内時計が反応するのは青色の光です。技術の進歩によりLEDが活用されている現代、私たちは青色光に囲まれて生活するようになりました。かつてのろうそくの灯は赤色光が主体ですが、LEDは青色光が強くなっています。パソコンやタブレット端末の画面もLEDは主役をなし、私たちは日夜青色光を直視しているといっても過言ではありません。
不眠の訴えの中で、今まで眠れていたのに突然寝つきが悪くなったという例が最近聞かれます。いつものように生活して、思い当たる心配事もないのにと怪訝そうです。そこで、寝る直前に携帯など見ていないか尋ねると、多くはそのような状況にあります。こうした例は、寝る前1時間、間接光での読書などに切り替え、青色光を近くで直視しないように工夫するだけでも、スムーズな入眠を取り戻せることが多いようです。
(シリウス・一番町[シリウスプレス]5th Anniversary 掲載)
参考文献: 睡眠のはなし,内山 真著,中公新書,pp.43-49; ナショナル ジオグラフィック 日本版 2018年8月号,pp.48-50
