斎藤 徹
性差 (「仙台経済界」2003年 7-8月号掲載)
男女の考え方や行動についての書籍が目立ってきました。性の違いに関心が高まっています。
1980年代半ば以降、社会的性差が問い直され、男女平等の法律が成立し、意識改革も進められました。ところが実際共に活動する場が増えると、価値観の対立が急増します。そして90年代、あらためて男女の違いが考えられ始めてきたところでした。
注目を集めている一連の書籍の発端は「話を聞かない男、地図が読めない女」(主婦の友社)と伝えられます。
このことを知る少し前、同様のテーマに関する記事と出会いました。イギリスの月刊誌、「プロスペクト」5月号に掲載されたもので、そこにはオーストリアの小児科医、ハンス・アスぺルガーが自閉症の研究を通して得た知見が盛り込まれています。
その記事によれば、古くから言われてきたように、「男性は組織的に、女性は共感的に考える」そうです。これは心理実験で確認されており、一般に男性は物事を分析、検討し、全体を支配する規則を捉えるのが上手く、女性は相手の顔つきや声の調子など非原語的コミュニケーションから周囲の状況を察知する感覚が鋭いようです。その点地図は規則的に組織立てられた典型例であるため、読みは男性が得意なところとなり、女性に比べて短時間で位置関係を把握し、正確に方向や距離を記憶できると述べられていました。男性脳のこの組織化傾向が極端な状態が、機械的な言動と対人関係の困難を呈する「自閉症」とアスペルガーは説いています。
プロスペクトの記事が続けるには、世の中のコンピュータ化に伴って男性脳の機能が求められ評価されてきた後、気配りや共感性が男女を問わず期待されるようになったそうです。自閉症はこうした期待が大きくなるにつれ増えているとされます。そして最後に、社会が女性化へ傾くあまり、うまくコミュニケーションがとれない人達への寛容度が狭まらないよう注意を促していました。
性の問題はいつの時代でも形を変えて巡って来るようです。また、個々の多様化が広がる現在、ことはますます複雑になっています。とはいえ、生物学的な男女の差異は無視できません。そこにある両者の違いを理解しながら互いの調和を見出す方向に進んで行きたいものです。
「仙台経済界」2003年 7-8月号掲載
